610ブルーバードのオーナーさんがプラグがかぶったような調子との事で、自走で何とか来店されました。
当ページでは610ブルーバードに搭載された、L16型エンジンのオーバーホール作業をご紹介させて頂きます。
エンジンを始動し状況確認した結果、明らかに1気筒不発のような兆候が見られたので、まずは点火系の診断から開始します。しかしプラグは正常に火花が飛んでいるのが確認でき、吸気系(ソレックス)も異常が認められないので、次はエンジン本体を疑います。
コンプレッションゲージで各シリンダー内の圧力を測定すると、1番と4番は13~14程度(画像左上)ありましたが2番と3番はゼロの状態でした。この事からエンジン内部で異常が発生している事は確実になりましたので、オーナーさんと相談しエンジンを降ろす事となります。
40φソレックス(画像右上)を外すとロッドが斜めの状態となっていますが、これは6気筒用インマニを加工して装着し、インマニ同士が繋がっていない為です。
エキマニを外した時に2番・3番の排気口(画像左上の黄色丸)から、冷却水+オイルの泥状の液体が流れ出しました。
このような2気筒同時のトラブルの場合、シリンダーブロック割れ・ヘッド割れ・ヘッドガスケット抜け・が原因として予想されます。
タペットカバーを外し(画像左上)ヘッド本体を分離して確認できたのが、2番と3番の間のヘッドガスケット抜け(画像右上の黄色丸)でした。
これは不幸中の幸いでオーナーさんにはヘッドガスケット交換と、ヘッド面研のみで暫くは走行可能では?と提案させて頂きましたが、「この車には長く乗りたいのでしっかりと直したい」とのご意向で、更に分解を進めます。
オイルパン ~ オイルストレーナー(画像左上)を取り外してやり、コンロッド子メタルをはぐって見ると予想通りの傷入り磨耗状態でした。メタルは消耗品なので、年式が古い過走行車は大抵このような状態です。
純正83φピストンの側面には縦傷(画像左上の黄色丸)がありましたが、なんとか許容範囲内の状態でした。
別のコンロッド子メタル(画像右上の黄色丸)は通常の磨耗と異なり、中央部分に何かしら異物が混入した事による黒い縦傷を発見しました。
コンロッドの取り外しが完了したら、次はクランクシャフトを取り外します。(画像左上)
クランクシャフトの端を支えているメタルですが、変磨耗して銅色に変色(画像右上)しているのが確認されました。この事によりクランクシャフトが僅かに曲がっているのは確実で、曲がり修正の作業が必須となります。
シリンダーブロックとピストンの消耗状態からオーナーさんと相談し、ピストンは亀有エンジンワークス製86φに交換しシリンダーブロックはボーリングする事となりました。
コンロッドは再利用するのでピストンと分離(画像左上)してやります。そしてヘッド作業に移行します。
ヘッド点検時にロッカーアームに磨耗(画像左上の黄色丸)が見つかり交換対象となります。
修理ではなくチューニング作業として吸排気ポート拡大(画像右上)のご依頼も頂きましたが、このL16ヘッドは有鉛仕様でしたので、バルブシートの交換まで行うと作業工賃がかさみます。その為、当店在庫のL18中古ヘッド(無鉛仕様)にて加工作業を行う事となりました。
ガスケットの穴サイズぎりぎりまでポートを荒削り(画像左上)で拡大し、段階的に目の細かいリューターに交換して徐々に鏡面仕上げ(画像右上)にしていきます。
ポート研磨が完了したら徹底的に洗浄(画像左上)を行い不純物を取り除きます。
燃焼室にオイルを注入して容積を測定(画像右上)し、圧縮比を決める為にヘッド面研を何mm 行えばよいか計算を行います。
上記でもお伝えしましたがピストンを純正83φ → 亀有86φに仕様変更するので、外注作業によりシリンダーブロックのボア径を拡大しました。ヘッド接合部の歪みは規定値内でしたので、面研作業は行っておりません。
シリンダーブロック側面にあるメクラ蓋(画像左上の黄色丸)は、長年使用すると錆が発生(画像右上)しやすく部品価格も1枚あたり数百円なので交換対象です。
メクラ蓋が取れたら洗浄用シンナーを使って高圧洗浄(画像左上)を行い、不純物をシリンダーブロック内から洗い流します。そして塗装後に新品のメクラ蓋を装着(画像右上)して下準備が完了です。
クランクメタルはスタンダードサイズをチョイスしましたが、クランクシャフトとのクリアランスを確認する為にプラスチックゲージ(画像左上の緑線)をセットします。
クランクキャップを装着して締め付けて、プラスチックゲージを潰し、潰れた幅をゲージで測定(画像右上)して規定内であればOKです。
親メタルをシリンダーブロックに装着し、オイルを塗布して均等に馴染ませます。
クランクシャフトをシリンダーブロックに組み込み、オイルを塗布後(画像左上)にクランクキャップを規定トルクで締め付け(画像右上)ます。
ピストンは耐久性を重視し、亀有エンジンワークス製86φ鍛造品をチョイスしました。
コンロッドは再利用しますが、コンロッドボルトはエンジンパワーが上がっている事を考慮(1600cc → 1712cc)し、ARP製の強化品を採用します。
新品のピストンは1000番位のペーパーで必ずバリ取り作業(画像左上)を行い、ピストンリング(画像右上)やコンロッドを装着していきます。
ピストンリングコンプレッサーでピストンリングを縮め、シリンダーブロックに挿入します。
コンロッドとクランクシャフトを接合したら、ようやく腰下部分の完成です。
ヘッド(カムシャフトは亀有エンジンワークス製 75度Aカムを採用)とシリンダーブロックを組み付け、バルブタイミングの調整(画像左上)を行います。エンジンパワーとレスポンスに関わる重要な作業なので、納得のいくまでつきつめます。
エンジンが組みあがりましたら車両に搭載し、配線関係の装着(画像右上)を行います。
キャブレターやエキマニといった補機類を装着し、キャブ調整(エアー調整・同調・ジェッティング・燃圧・プラグポイント等)を実施して作業完了となります。
エンジンの状態・部品の消耗度・仕様変更等により、料金はかなり幅がありますので詳細はお問い合わせ下さい。